医療安全部

札幌社会保険総合病院医療事故の公表について医療安全指針

札幌社会保険総合病院医療事故の公表について

 平成22年9月2日に発生しました医療事故が当院における「医療事故発生時の公表基準」に合致しますのでご報告いたします。

平成23年10月14日

1 事故概要

 平成22年9月2日開腹胆嚢摘徐術施行患者(81歳)が手術室退室後意識障害発症、高度除脈、血圧測定不能となり、再度気管挿管にて呼吸管理を行ったものの直後は意識障害の改善がなく結果的に低酸素脳症の症状が残りました。

2 事故調査委員会からの報告

 外部委員1名を含む「事故調査委員会」において事故原因の究明と防止策などの検討が行われました。以下検討内容です。

(1)本経過は患者にとって有害事象であることは明らかで、重大な医療事故にあたる。

(2)低酸素脳症と確定診断は出来ないが、臨床的に低酸素脳症と診断は可能である。現在までいまだ症状固定なされていないが、高次脳機能障害に至る可能性が高いと判断される。

(3)周術期麻酔管理に関連する事象と考えることは妥当であり、病院として管理責任があると認められる。

(4)当院における麻酔マニュアルや手術部運営マニュアルなど関連マニュアルの見直しと問題点の改善を行い、関係者に周知徹底して再発防止に努めなければならない。

(5)病院として家族には丁寧に説明した上でよく話し合うことが必要である。

3 事故再発防止策

 2で記載した事故原因に対し、術後の手術室内および、手術棟から病棟までの患者移送時の危機管理の改善を図るため、以下のとおり基準及び手順について改定をした。

○基準

(1)十分な麻酔覚醒状態での帰室
  <手術室退室基準>
 1. 意識状態:簡単な会話可能
 2. 呼吸:酸素投与下SpO2が95%以上
  あるいは、空気呼吸下SpO2が90%以上
 3. 循環:収縮期血圧が入室時血圧に対し±20%
  あるいは、収縮期血圧が100mmHg以上で安定
 4. 強度の疼痛がない

(2)患者移送時のモニター改善
 上記(1)の大基準を満たせない場合、担当麻酔科医の判断で、下記を必須とする。
 1. 酸素投与
 2. パルスオキシメーター装着を含む呼吸状態モニタリング
  移送前・必要に応じて移送中・移送後
 3. 声かけを含む意識レベルの確認
 4. 血圧測定・橈骨動脈触知・パルスオキシメーターを含む循環モニタリング
  を適宜施行しつつ移送する。

○手順

(1)手術室内術後患者移送
 すべての全身麻酔後の手術室内患者移送は、担当麻酔科医の主導の下に、麻酔科医と手術室看護婦2名が連携して行う。(手術担当医の同行)
 上記基準(2)を適応

(2)手術室から病棟への移送
 原則2名の病棟看護師(看護助手を含む)により行う。
 すべての全身麻酔術後患者の移送は、
 1. 酸素投与
 2. パルスオキシメーターを装着のもとに行う。
 「十分な麻酔覚醒状態での帰室」の基準が満たされない術後患者は「患者移送時のモニター改善」を適応し、麻酔科医(場合により手術担当医)が同行して帰室する。

病院として

 今回の事故は、場合によっては最悪の事態にも繋がりかねない事例でした。まことに遺憾であり、ご本人およびご家族に対し心からお詫び申し上げます。また地域医療支援病院として、地域の皆様の、当院に対する信頼を損ねる結果となりましたことに対しても重ねてお詫び申し上げます。今後、万全な事故防止対策の確立に向けて職員一丸となって努力してまいりますので、今まで同様、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、患者さんの全身状態の改善とリハビリを最優先させたため、公表がこの時期となりました。公表が遅れましたことにつきましては、重ねてお詫び申し上げます。

平成23年10月14日

病院長 秦  温信



 平成21年9月11日に発生しました医療事故が当院における「医療事故発生時の公表基準」に合致しますのでご報告いたします。

平成21年12月25日

1 事故概要

 平成21年9月9日の昼食から、患児(生後11ヶ月)に離乳食後期の食事を提供しました。患児には、卵と牛乳・乳製品の食物アレルギーがありました。9月11日の昼食で提供した食事に食物アレルギーであるチーズが入っており、それを摂取したため、患児にアナフィラキシー症状が出現しました。

2 事故原因の究明

 外部委員1名を含む「医療事故調査委員会」において事故原因の究明と防止策などの検討が行なわれました。以下検討内容です。

(1)アレルギー用の献立が存在しないため、その都度栄養士がアレルギー食材をチェックし、献立を修正していた

(2)別の栄養士による修正した献立のチェックがもれてしまった

(3)調理師のアレルギー食材の確認が充分に行われていなかった

(4)チーズは溶けていて見た目にはわからなかった

 これらのことが重なったことにより患児が摂取に至ったものです。

3 事故再発防止策

 2で記載した事故原因に対して、以下の事故再発防止策を実施しております。

I.献立のチェック体制について

 (株)日総栄養士がアレルギー献立を作成した際に、別の栄養士が献立のチェックを行なう。さらに別の勤務栄養士が再度チェックを行なう(当日勤務している栄養士全員が目を通す)。

 (1)献立チェックは、厨房職員が各々ペンの色を変えて記しをつける。
 (2)献立表に献立チェックをした栄養士は捺印する。
 (3)前日に材料を用意する調理師が確認し、色ペンでチェックする。
 (4)当日の調理師に栄養士と調理師が引き継ぎを行い、確認する。

II.アレルギー献立について

〈変更前〉
 離乳食および小児食は、食物アレルギーに応じて基本献立からその都度、該当する献立のアレルギー除去献立を手書きで作成しており、食物アレルギー用の献立はなかった。

〈変更後〉

1. 離乳食献立の変更

(1) 離乳食献立は、表示義務のある7品目(卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに)に該当患者の多い大豆を加えた8品目を使用しない基本献立を作成する。
(2) 8品目以外のアレルギーに該当する場合は、別献立にて食事を提供する。
(3) 離乳食の献立サイクルを4日に短縮し、献立を簡素化する。

2. 小児食アレルギー献立の作成

(1) 小児食の基本献立とは別に、アレルギー対応献立として表示義務6品目(卵、乳、そば、落花生、えび、かに)を使用しない献立(1)と6品目に小麦、大豆を加えた8品目を使用しない献立(2)を作成する。
(2) 8品目以外のアレルギーに該当する場合は、別献立にて食事を提供する。
(3) 小児食のアレルギー献立は、1週間分とする。

3. 離乳食および小児食のアレルギー献立使用食品について

(1) 離乳食および小児食のアレルギー献立で使用する食材(事前に準備した食材)は、別容器に入れ、他の食材と混合しないように保管する。
(2) 調理の際は、別容器から食材を取り出し作業を開始する。
(3) 提供当日に食事開始オーダがあった場合(事前に食材を準備していない場合)は、(株)日総栄養士に使用食材の確認を行い、担当調理師は必要な食材を準備し作業を開始する。

III.食材料の提示
1.食事の配膳時に提供する献立と食材料を記載した用紙を配布する。

(1) 基本アレルギー献立1週間分(6品目および8品目)の献立表(食材料を記載したもの)を食事案内時に配布する。
(2) 基本以外のアレルギーがある場合は、毎食献立表(食材料を記載したもの)をトレイに設置して配布する。

2.これらにより、下記の通り各々が確認することができ、誤配膳防止に努めることができる。

(1) 食材料を記載した用紙で、栄養士および調理師は提供する食事の確認を行なう。
(2) 病棟で配膳時に看護師および看護助手も確認できる。
(3) 母親が食事内容の確認を行なうことができる。

IV.給食食事オーダの変更

(1) アレルギー献立を新たに作成し、給食管理システムに登録したことで、その都度献立作成を行なう業務がなくなる。
(2) 食札への手書き修正は継続されるが、決まった献立名を記載するのみとなる。
(3) アレルギー献立以外にアレルギーがある場合は、手書きでの献立修正は継続される。
(4) アレルギーコメントが選択された場合に、給食管理システムへ取り込むこととする。

病院として

 今回の事故は、人的ミスがいくつも重なったことによるものですが、時には大きな事故にも繋がりかねない事例であり、まことに遺憾であり、ご本人およびご家族に対し心からお詫び申しあげます。また地域の中核病院として、そして道央圏唯一の地域医療支援病院として、地域の皆様の、当院に対する信頼を損ねる結果となりましたことに対しても重ねてお詫び申し上げます。今後、万全な事故防止対策の確立に向けて職員一丸となって努力してまいりますので、今まで同様、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

平成21年12月25日

病院長 秦  温信



 平成18年10月10日に発生しました医療事故が当院における「医療事故発生時の公表基準」に合致しますのでご報告いたします。当初、患者側が公表を希望されなかったため、公表をおこないませんでした。このたび患者から事故の概要を公表してほしいと望まれたため、病院ホームページに掲載することにいたしました。

平成19年11月30日

1 事故概要

 前立腺癌の患者(76歳)に対し、平成18年10月10日当院泌尿器科にて前立腺摘出手術を行いました。その手術中の15時20分に左外腸骨動脈を誤って1/3周切り込みました。ただちに縫合修復しましたが、左下肢の血流が回復せず、同部の壊死が進行し10月12日、夕刻に転院先にて、大腿骨近位1/3部分で切断手術が行われました。

2 事故原因の究明

 外部医師2名を含む「事故調査委員会」において事故原因の究明と防止策などの検討が行なわれました。以下検討内容です。

(1)手術時の左外腸骨動脈損傷
 リンパ節を廓清している最中、動脈の存在を充分確認せず誤って血管を損傷してしまったことが事故の第一の原因と考えられます。

(2)左外腸骨動脈損傷後の処置
 損傷血管縫合後、左足背動脈の脈拍が十分触知されず、ドップラー法にて同部の血流が確認できなかった時点で、MRIまたは血管造影などを施行して左外腸骨動脈より末梢の循環動態を確認していなかった事が第二の問題点であったと考えます。

(3)手術後病室に戻ってからの判断
 10月10日(手術日)の19時00分より再三患者から左下肢の疼痛の訴えがあったのにもかかわらず、疼痛処置のみをおこなっており、左下肢の血栓症による血流遮断を念頭に置いた適切な診察と診断がなされなかったことが第三の問題点であったと考えます。

(4)循環器内科医師への相談時期
 10月11日(手術日翌日)7時30分に泌尿器科部長と同科医長が診察をしており、左下肢の蒼白に気づきました。そのとき循環器内科部長への緊急連絡をとらなかったことが第四の問題点と考えます。この時点では左外腸骨動脈損傷後から約16時間を経過しておりましたが、適切な処置をしていれば実際の切断部位より末梢の部位での切断ですんでいた可能性があったと考えられます。

(5)患者の合併症に関する認識不足
 患者は糖尿病、高血圧症を合併症としてもっており、術前のCTにて腹部大動脈瘤の存在が確認されていました。このため泌尿器科では術前に循環器内科に相談しておりました。また腹部大動脈のほかその末梢の動脈も蛇行しており、動脈壁の石灰化もあったことから、動脈硬化が相当進行していたと考えられました。したがって患者の動脈は内膜の損傷がおきやすかったと考えられ、このことを念頭において動脈損傷後の治療にあたるべきであったと考えます。

3 事故再発防止策

 2で記載した事故原因の(1)から(5)に対して、以下の事故再発防止策を実施しております。

(1) 手術において、手術手技的な点はもとより、手術前の患者の全身状態の確認から予測される合併症への対応を含めて、担当医、関係する専門医との討論を十分に行ない、安全な手術ができるようにしています。
(2) 手術中、予期せぬ合併症や事故が発生した場合、関係する専門医を直ちに集め、事態の十分な把握の上で、速やかに必要な検査、治療を行なっています。
(3) 手術後の患者への対応として、手術による患者の状態の変化、影響を十分考えた上で、必要時専門医への相談、診療も含め、適切に対応しています。
(4) 診断、治療に疑問がある場合は、問題点をスタッフが共有し、対応しています。
(5) 職員一人一人が医療安全に対する意識を高め、安全な医療の提供のために、職員研修を今後も定期的に継続します。

病院として

 重大な事故に至ったことは誠に遺憾であり、障害を受けられたご本人に対し、またご家族に対し心からお詫び申しあげます。また地域の中核病院として、そして道央圏唯一の地域医療支援病院として、地域の皆様の、当院に対する信頼を損ねる結果となりましたことに対しても重ねてお詫び申し上げます。今後、万全な事故防止対策の確立に向けて職員一丸となって努力してまいりますので、今まで同様、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

平成19年11月30日

病院長 秦  温信